2023/06/19 03:32


■少子化が進むりんごの町の廃校でりんごのお酒シードル造り

 長野県北部に位置する飯綱町は、地域に愛される北信五岳の山々を眺望できる人口約11,000人ののどかな町で、農業が基幹産業です。寒暖の差が大きな気候が果物栽培に適しており、県内有数のりんごの名産地として知られています。この飯綱町で私たちが造り始めたシードルは、リンゴを主原料とする発泡性の果実酒のことで、欧米で伝統的に造られて来ました。地域色が強い地酒であるシードルが、21世紀に入りイギリスでおしゃれでカジュアルな低アルコール飲料として若者の人気が高まり、世界各地でも生産量が増えたことで、世界のシードル市場は11年間で約1.8倍に成長したと言われています。日本でも、30代〜40代の女性を中心に年々人気が広がっており、若者のリンゴ離れが進むなか、気軽に飲めるRTD(Ready to drink)飲料であるシードルを選ぶ人が増えています。14年前から委託醸造によりシードル造りを始めていた私たちはもちろん、若手りんご農家にもシードルの生産意欲が高まっており、リンゴ産業における6次産業化の先進的な事例になりつつあります。


■醸造所として廃校を活用
 私たちは、小学校の統廃合により2018年3月に閉校した旧三水第二小学校の職員室等を活用してシードルを造っています。子供達のいなくなった校舎に大人たちにも来てもらおうと考え、2019年2月にシードル醸造所を開業しました。この醸造所を「林檎学校醸造所」と名付け、長年シードルを販売してきたリンゴ農家仲間で立ち上げましたが、廃校を活用しようと決意するまでには、あまり時間は要しませんでした。以前より、委託醸造でシードルを造り販売をしていましたが、こだわりの実現、そして生産本数の確保など考えると、委託醸造に限界が見えていたからです。そして地域にシードル専門醸造所を造ろうという想いに賛同者が増え実現に向けて動き始めた時、その建設場所を決める段階で地元小学校が統廃合されることを知りました。シードルは特産品としてだけでなくツーリズム開催も地域活性化にも結びつくと考えていたこと、さらに廃校活用の不思議な魅力も感じて、校舎活用に名乗りをあげることにしました。地域の資産である廃校と、特産のリンゴを使うシードルを結びつけ、地域に新たなランドマークを築くことで国内外からの来訪者を増やしていこうということで、そのために取り組むべきことは、美味しいシードル造りと魅力的なシードル文化の形成ではないかと考え、教室等でシードルの学び舎も開催しました。

■ビジネスプランコンテスト出場により応援者を獲得
シードル事業だけでなく廃校活用の取り組みの成功させるために、より多くの方に応援して頂き、そして町の共有資産を安心して貸していただくことが重要と考え、ビジネスプランコンテストに挑戦しました。2018年3月に開催された町主催のビジネスプランコンテスト「第1回いいづな事業チャレンジ」で最優秀賞を頂き、林檎学校醸造所プロジェクトが正式にキックオフしました。また、同年9月に出場した「信州ベンチャーコンテスト2018」では、起業部門グランプリ、オーディエンス賞をW受賞し、県全体に私たちの活動が知られるようになりました。そして、2019年2月に出場した中小企業庁主催「第5回全国創業スクール選手権」では、最高賞の経済産業大臣賞を受賞させていただき、町の皆さんに一層ご理解いただけるようになりました。(と思っております)

■大切な仲間と共有する想いと個々の夢
2019年2月に果実酒製造免許をいただき事業を無事スタートしたわけですが、いくつもの課題を乗り越えるために何より欠かせなかったのは仲間であり、産地や地域の活性化という共通の想いと個々が抱く夢でした。

羽生田清(取締役CFO

いつか長野県北部が北信五岳シードルバレーと呼ばれる日を目指し、林檎学校醸造所をりんご農業体験やオリジナルシードル造りなど体験も楽しんで頂ける場にしたいです。2001年9月初めに私は友人4名でアメリカのナパ・バレーにいました。いくつかのワイナリーを回り、昼は近くのスーパーでおつまみとワインを調達、夜はレストランで食事をして、次の日もワイナリー巡りという3日間でした。地域そのものが一つのアミューズメントパークとして機能していることがとても刺激的でした。シードル市場が広がり始め、働き方改革やワークライフバランスの取り組みが広がり、人生を楽しむことが良いことである風潮ができつつあるなか、私たちのりんご産地にもナパ・バレーのような体験と賑わいが生まれることを望みます。