2023/06/14 22:27
日本において、もともと食中酒としてのイメージがなかったシードルは、仏・ブルターニュ地方で親しまれているガレットやチーズと一緒に飲むのが定番という印象を持たれている方は多いと思います。世界各国で造られ、その国の料理と楽しまれているシードルは、相性が良い料理も幅広いですが、加えてペアリングのコツを掴むことで更にシードルを楽しむことができます。
その中でも日本のシードルは、総じてシードルはどんな料理にも合わせることができる優等生です。ではどんな料理と合わせられるか。特におすすめしたい料理とそのポイントを、肉料理、魚料理、野菜料理、スイーツの4つのジャンルに分けてご紹介いたします。
◇肉料理
シードルに合うお肉として一番に取り上げたいのは豚肉です。ソテーはもちろん、しょうが焼きや肉じゃが、豚の角煮、酢豚、餃子などといった家庭料理の定番メニューは、りんごの風味がしっかりとした日本のシードルと相性が良いです。また、焼鳥をはじめ、唐揚げや、チキンのトマト煮込み、棒々鶏サラダなどには、すっきり辛口タイプのシードルとよく合います。また、最近人気のジビエ料理にもおすすめです。鹿肉ソーセージや猪のリエット、鴨のテリーヌ、鹿のパイ包み焼きなどのジビエ料理をはじめ、短角牛のロースト、ホロホロ鳥のバロティーヌ、りんごのチップで燻した信州福味鶏のローストなど、本格フレンチレストランで味わえるような料理まで合わせることができます。
◇魚介料理
魚料理は生ものと火を通したものがありますが、こちらも幅広く相性の良さを発揮します。サーモンは確実に相性が良く、カルパッチョやタルタル、コンフィなどがおすすめです。意外だったのは、青魚や白身魚のお刺身との相性の良さです。わさび醤油をつけて食べると口の中でりんごの風味が調和します。シードルはお酢との相性が良いため、りんご酢でしめた〆サバには爽やかな甘さ控えめのシードルと、また鮨酢を使うお寿司には少し旨みを感じるにごりシードルと合わるのがおすすめです。他にも、岩牡蠣の酒蒸し、ホタテのソテー、いくらの漬丼、鮎のパイ包み焼きなど、魚介類全般と合わせることができます。
◇野菜料理
野菜も生で食べるサラダから、野菜のグリルなどシンプルに焼き上げたものなど、幅広く合わせて頂けます。カプレーゼやキャロットラペ、白菜とりんごのサラダ、ポテトサラダ、青菜のお浸し、きんぴらごぼう、ゴーヤチャンプル、パクチーなどの香味野菜を使ったエスニック料理など。柑橘系やハーブのような香りがする辛口シードルと合わせると良いでしょう。
◇デザート
食後のデザートにもシードルをおすすめできます。りんごはスイーツの素材としても使われるため、相性抜群のペアリングとなります。例えば、アップルパイやタルトタタン、りんごを使ったチーズケーキなど、りんごが使われているスイーツであれば、失敗することはまず無いでしょう。他にも柑橘系のタルトや、シュトーレンなどの焼き菓子にも合わせることができます。もちろん、定番のガレットやクレープも外せません。すっきり辛口タイプよりも、少し厚みのあるふくよかなタイプ、もしくは甘口シードルと合わせると良いでしょう。
さらにシードルペアリングを楽しんで頂くために、お料理とシードルの国や産地を合わせることをお勧めします。そのシードルを同じ産地で生まれ育った食材を使った料理と合わせて頂くことは、その土地の風土、風味を感じながら自然の恵みを頂くことができる最も贅沢かつ魅力なペアリングだと感じています。例えば、長野県には野沢菜やキノコ、信州サーモン、鹿肉など地域の名産品がありますが、それらを使った料理と長野県産りんごを使ったシードルを合わせることで、その地域ならではのマリアージュが完成します。豊かな食材を五感で味わい、造り手に感謝しながらシードルを味わうことで、その地域に生きる人や動物、産地の魅力がより強く鮮明に思い出に刻まれることでしょう。産地の他にも、品種、季節によって様々なペアリングが楽しめますので、いろいろな組み合わせを体験して、シードルの楽しみ方を広げてみてください。